40代女性 土木系の転職体験談 | やりたい仕事があれば妥協しない。そして、諦めないことで見つけた理想の職場

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就職氷河期に新卒採用の時期を迎えた今川さん(仮名)・42歳。ものづくりに携わりたい思いを抱えながら様々な仕事に就く中で、自分の強みとなる経験・スキルを獲得。それを武器に納得できる仕事に就くことができたと言います。これまでの経歴などについてお話を伺いました。

就職氷河期の中、厚生労働省へ入省するも、ものづくりへの気持ちを抑えられず退職

新興住宅街で育った私。日々の生活の中で建築物ができあがっていくことに興味を覚え、建築士になることを夢見るように。

大学は工学部へ進学。よりスケールの大きなものづくりに携わるため、土木分野を専攻。そうして就職活動時に選んだのは、公務員になるという道でした。

公務員試験には無事合格。しかし、当時は就職氷河期。直近30年の中で、最も求人倍率の低い年でした。高い倍率の影響もあり、希望であった国土交通省は不採用。しかし、縁があり厚生労働省へ入省。労働基準局へと配属となりました。

氷河期の中、国家公務員として採用されたことに満足するべきだったのかもしれません。だけど、ものづくりへの思いを捨てきることはできませんでした。そうして3年働いた後、転職活動を開始。

しかし、希望であるゼネコンは求人の募集をストップ。だったら広い意味では建設業界だから、とハウスメーカーへと転職を決めました。

結果的に、このときから様々な職への遍歴が始まったのです。

希望の仕事の募集がない。そのため、様々な仕事に就いた20代。

ハウスメーカーで就いた職種は営業事務。ようやく就いた建設業界の仕事ではありましたが、設計職ではないこと。そして、作りたいのは家ではないことを改めて認識。そのため、1年ほどで退職を選びました。

次に入ったのは土木系の労働組合にて団体職員として勤務。土木業界を下支えする、という役割に価値を見出していたものの、政治色が強い団体であったこともあり、ここも1年ほどで退職を選ぶことに。

転職活動をしようと求人を探しても、希望の仕事に関われるゼネコンは求人を出していない。そもそも女性技術者の採用に積極的ではない。ならば、いっそ女性が多く働く業界を受けてみようか、と考え、応募したのは旅行会社でした。

無事、契約社員として採用され、勤務開始。これまでと違う仕事に就くことは新鮮で面白みも感じました。でも、なにか違う。この仕事にずっと就きたいかと問われれば頷けない。ここも1年ほどで退職を選び、建設業界へ戻ることにしたのです。

工事に欠かせない「積算」。これこそ私の経歴を活かせる業務と確信。

ゼネコンのグループ会社である派遣会社に登録。派遣社員として様々な建設会社の業務に就きました。

とある設備系会社へ派遣された際、担当したのが「積算」と呼ばれる見積を作成する業務。それは現場で行う工事の材料費や人件費などを算出し、積算用のシステムに入力する作業です。

正しい算出を行うためには、施工方法や施工する場所、時期など様々な要因を検討し、それぞれの工程でかかる費用を予測することが必要。そのため、現場経験を持った方が担うことの多い業務と言えます。

そのような業務に、現場経験の少ない私が就くことにはいくばくかの不安はありました。しかし、担当するうちに積算業務でこそ、私のこれまでの経歴が活かせることに気づいたのです。

土木工事を行う際、発注主の多くは自治体や官公庁など。公共工事では、国土交通省が定めた「土木工事積算基準」に則ったうえで、各入札説明書の内容に沿った積算を作成しなければなりません。

ところが、この入札説明書が厄介。ボリュームが多いうえに、必ずしも工事を熟知した人が作成しているわけではないため、意図が読み取れないこともあるのです。

しかし、私はもともと公務員。いわば発注する側の仕事をしていたため、入札説明書の行間が読めるというか、記載された内容の重要なポイントが自然と汲み取れたのです。

それが発揮できたのは、大手ゼネコンへ派遣されていたとき。震災の復興事業における入札プロジェクトへ参加。入札説明書を丁寧に読み取ったうえで、発注者の求める内容を推測。ポイントを踏まえた積算を作成したことで、見事400億という大型工事の受注に貢献することができました。

評価と失望を同時に味わった30代。だけど、前を向き続ける。

派遣先だった大手ゼネコンからも高い評価をいただき、正社員になってはどうか、と社員登用の誘いが。「自分のやりたいポジションを、自分の力で勝ち取ることができた」これまでの苦労と努力が報われた、と感じました。

しかし、提示された待遇は思ってもいない低いもの。男性総合職とは比べようもないものでした。待遇が違う理由を聞いたところ、「女性は現場に出られないため」とのこと。同じ業務をしているのに、なぜ待遇がここまで違うのか。正直、納得はいきませんでした。

ならば他の会社だったら、と他の大手ゼネコンへ契約社員として転職。ここでも積算の仕事を担当し、様々な案件を任せてくれたため、経験を積むことができました。しかし、社内の人間関係トラブルに巻き込まれ、1年ほどで転職を決意。

その後は建設業界に強い派遣会社へ登録し、1年ほど大手ゼネコンで勤務。様々なプロジェクトへ参加した後、別の派遣会社へ登録。ここでもまた、大手ゼネコンで積算業務を1年ほど担当しました。

このとき、年齢は30代も終盤。一度の離婚も経験していたため、身を支えるのは自分の力のみ。しかし、置かれている状況は安定には程遠い派遣社員という身分。心細さ、そして将来への不安はもちろん抱えていました。

しかし、安定した公務員の立場を捨てて、この道を選んだのは他でもない私。前を向くしかありません。

派遣社員として働くメリットは、多くの会社の様々なプロジェクトに参加できること。ならば、吸収できることは何でも吸収してやろう。自分に実力があれば、誰にも何も言われない。

そういった心境で働いてるなか、ようやく理想の職場に出会ったのです。40歳になった年のことでした。

ようやく見つけた、自分のやりたいことと安定のバランスが取れる環境。

人づてで見つけたその会社は、建設業に特化したベンチャー企業。働き方はこれまでと同様、建設会社やゼネコンなどへ常駐する形ですが、これまでと大きく違うのは「雇用形態が正社員」であるということ。

正社員として雇用されるため、もちろん無期雇用。ようやく雇い止めの心配から開放されました。さらに厚生年金も、ボーナスも、退職金も整った環境。ボーナスなんて、公務員時代の頃にもらったきり。ようやく経済的に一息つける状況を手に入れることができました。

40歳という若くない年齢でも入社できた理由は、やはり積算の業務で多くの経験を積んできたからだと思います。

土木の技術は日々進化しており、工法が異なれば大きく原価も変わります。「最高のサービスを適正な価格で提供するためには、積算の担当者は常に新しい技術のキャッチアップをし続けなければならない」その思いで積んできたこれまでの研鑽が実を結んだ、そう思っています。

自分の強みを探し、飾らずに自分を伝えること。それがミドル層の転職で必要なマインド。

年齢を経るにしたがって、面接をしても採用に至らないことが増えるようになった頃。私が行ったことは、きっちりと自分と向き合うことでした。

自分のやりたいこと、向いていること、経験してきたこと。それらと向き合い、整理する。そうして、私の場合は積算の仕事にオリジナルな価値を見出し、その武器を活かす活動を心がけました。

もう一つ意識したのは、自分という人間を飾らず伝えること。年を重ねてわかってきたことは、面接は採用される場ではなく、相互理解を図る場だということ。

かつては、受かりたいがために、面接でいいことばかりを話していた時期もありました。でも、自分に合わない職場に入っても仕方がない。だったら自分を出す、人間味を出す。そうして落ちても仕方がない。もともと合わなかったと割り切るようにしました。

素の自分を評価してくれる会社ならば、好きになれる。長く働ける。そうした姿勢を貫いてきたからこそ、今の職場に出会えたのだと思います。

まとめ

これまでのキャリアの中で、不安も不満も、たくさん感じてきました。ろくに仕事もしないのに、自分の倍以上の給料をもらうおじさんたち。彼らに心無い言葉を投げつけられたことも。でも、人は人。そう割り切って、前を向いてきました。

これからの目標は技術士の資格を取得すること。そして、海外でのプロジェクトに参加すること。そうしてキャリアを積み重ね、女性技術者に対して自分が蓄積した経験を伝えていきたい。

そんな目標を胸に抱き、これからも何事も諦めず、前を向いて生きていきたいと思っています。
※年齢は2019年5月取材当時のものです

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