2030年問題とは?高齢化と労働力不足が引き起こす問題について

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2030年問題とは?高齢化と労働力不足が引き起こす問題について

「2030年問題」とは、2030年に日本に生じうる社会的問題を総称した言葉です。人口が減少し超高齢化社会へと人口動態が変化することで、社会に変化が起こることが予測されています。この時代を生き抜くための心構え、働き方、ライフスタイルに焦点をあてつつ考えてみましょう。

この記事の目次

    2030年に日本人口の1/3が高齢者に!

    2030年問題とは、2030年を迎える頃に表面化するいろいろな問題のことを指します。原因の根本にあるのは、人口構造の変化です。2015年の日本の人口構成と、国立社会保障・人口問題研究所が発表した2030年の人口構成を見てみましょう。

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    2015年における日本の総人口は1億2,709万人。そのうち65歳以上の高齢者は3,386万人で、高齢者比率は26.6%。世界の先進地域における高齢化率は17.6%(内閣府調べ)となっており、当時の世界でも最も高い数値となっています。

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    しかし、その高齢化の流れは更に進み、2030年における日本の総人口予測は約1億1,912万人と減少するうえに、その内の31.1%にあたる約3,715万人が65歳以上の高齢者となります。つまり、3人に一人が65歳の高齢者となります。

    日本における高齢化の進行について

    まずは、WHO(世界保健機構)による高齢化社会についての定義を見てみましょう。

    【高齢化社会】  高齢化率7%~14%
    【高齢社会】   高齢化率14%~21%
    【超高齢化社会】 高齢化率21%以上
    ※高齢化率とは総人口における65歳以上人口が占める割合を指す

    日本は1970年の調査で7.1%を記録し、高齢化社会へ突入。その後1995年に14.5%を記録し高齢社会に。さらに2007年には21.5%へと進み超高齢化社会へと踏み出しました。

    高齢化社会へ突入してからわずか37年で超高齢化社会へと進んだ国は、世界各国の中でも日本だけ。そのスピードは群を抜いていると言われており、国をあげて取り組むべき優先課題とされています。

    直接的な課題は労働者人口が減少すること

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    超高齢化社会へ突入することにより、何よりも問題視されているのが「労働力人口の減少」です。
    生産活動の中核となる生産年齢人口(15歳から64歳の人口)は、2015年には7,728万2千人存在していますが、2030年においては6,875万4千人と852万8千人の減少が見込まれています。

    労働力が減少することで日本の経済活動は鈍化します。そして、起こることはGDP(国内総生産)の低下です。人口が減ることがGDPの低下に直結するわけではありませんが、生産年齢人口は稼ぎ手であると同時に、消費の担い手でもあります。そのため、企業は人口減が進むと国内内需の増加を見越した新規の投資を手控えるため、経済成長率が鈍化するのです。

    経済成長率が鈍化すれば国際競争力は下がるうえに、税収も下がることに。そうなれば国民の生活を支える社会保障費が不足し、様々な問題が発生することが予測されます。

    すでに労働力不足が顕在化している業種

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    航空業界

    航空業界では2030年頃にベテラン機長らの大量退職が見込まれており、パイロットの数が不足することが指摘されています。原因はパイロットを育成するには一人につき数億円と言われる育成費がかかるため、景気の悪かった時代に採用・育成を見送らざるを得なかった事情が背景にあります。

    IT業界

    経済産業省が発表した「IT人材育成の状況等について」によると、今後IoTやAI技術、市場が拡大することが予測されているのに対して、2030年までにIT人材の平均年齢は高齢化の一途を辿り続け、将来的に40~80万人の規模で人材不足が懸念されています。

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    観光業界

    2030年に訪日客数6000万人・消費額15兆円とする目標を表明している観光業界。現時点でも約6割の旅館・ホテルが人手不足を感じており、深刻な人材不足が現在からも顕在化しています。

    介護業界

    65歳以上の高齢者が人口の31.1%を占める社会において、介護サービスの需要はさらに高まりますが、現時点でも深刻な人材不足が顕在化しているため、介護人材における外国人労働者の導入なども検討されています。

    社会で起きうる大きな3つの変化

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    2030年に生ずるおそれがあるとして、特に懸念されている3つのリスクを見ていきます。

    高齢者の貧困が深刻化するリスク

    現在の年金制度は、現役世代が収める保険料が高齢者の年金支給に充てられる「賦課方式」が基本となっています。つまり、現役世代の支払った保険料が積み立てられるのではなく、そのまま年金受給者へと渡る制度です。

    しかし、2014年においては一人の年金受給者を20歳から64歳の2.2人が支えていますが、2025年においては1.8人に減少することが財務省の試算で発表されています。2030年においてはさらに支える人数が減少し、受給世代が増加することから、より逼迫した状況になることは確実に。そのため、受給開始年齢の引き上げや、支給額の減額も想定されます。

    そのため、年金収入だけを頼りにしている高齢者世帯の生活はダイレクトに影響を受けるため、食費や住居費など基本的な支出をまかなうことも難しい状況になりえます。


    高齢者世帯における生活面でのストレス

    日用品の買い物、ちょっとした力仕事などが発生したときでも、高齢者にとっては負担となる場合もあります。特に地方では大型ショッピングセンターの出店により、生活圏にある個人商店などが閉店に追い込まれる流れは加速しています。そのため、日用品の買い物さえ困難となるいわゆる「買い物弱者」の問題が今後さらに増加していくことが想定されています。

    買い物弱者・買い物難民等の問題ポータルサイト


    地方都市の衰退

    地方から都心部へ若者が流出していく流れが止まらないため、若年人口の減少は都市部以上に問題視されています。税収が減少することはもとより、森林の手入れ、私道の整備を行う労働力が確保できないため、荒廃する地域も出てきます。過疎地域が広がればさらに社会的な不安が増すおそれがあるため、都心部との経済格差が拡大することが想定されています。

    医療サービスにおける問題

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    さらに、医療サービスに対する負担も懸念される材料です。
    現在の健康保険制度では自己負担が1~3割、残りは国が負担する仕組みですが、総人口に対する高齢者の比率が高まることで国の医療費負担が重くなって、健康保険制度が立ち行かなくなる可能性が指摘されています。

    医療業界における人材不足も深刻化

    そもそもサービスを提供する医療機関も十分な人材を確保できず、経営が難しくなっていくリスクもあります。問題を解決できないままにケアを必要としていく高齢者だけが増え続ければ、希望する治療を受けられない人も出てくるでしょう。

    現時点でも、医療従事者は都心部に集中し、地方都市における医師・看護師不足が深刻化しています。そのため、充分な医療サービスを受けるには、都市部へ転居せざるを得ない。しかし、金銭的な負担を負いつつ、住み慣れた街を離れるストレスを抱えながら......そんな時代が、現実となる可能性があります。

    いつまでも働き続けることが明るい未来を生み出す

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    これらの諸問題の解決策は「出生数を増やす」こと。現在1.4程度の合計特殊出生率を2025年までに1.8にする目標を掲げ、これは国全体で取り組まなければならない大きなテーマです。しかし、個々人で対策する方法はあります。それは「長く働き続ける」ということです。

    人口動態統計月報年計における合計特殊出生率

    高齢者がいつまでも現役で活躍し、労働力を提供する流れは徐々に浸透しつつあり、一部の企業ではすでに定年退職年齢を引き上げる動きが始まっています。そのため、70歳もしくはそれ以上まで働くことがスタンダードとなる社会の実現は充分想定されることです。

    現在でも、65歳を過ぎた後も仕事を続けたいと考える方が一定数おり、労働者として活躍できる年齢は広がりを続けています。それは経済的な理由に限らず、働き続けることによって得られる暮らしの充実、適度な労働による満足感、そして社会のつながりを感じられることも退職年齢を上げている理由の一つです。

    そのための企業課題としては、現在行っている業務の見直しを行い、高齢者に任せる業務の仕分けを行うこと。そして、従業員自身やその家族が疾病、介護が必要になったときにサポートできるような人事制度を設けることなどが求められています。

    これからの日本は当分の間、人口減の方向に向かうのは既定の事実といえます。それでも次の世代に明るい社会を残すためにも、働き続け、健康であり続けることがもっとも重要と言えるかもしれません。

    出典:国立社会保障・人口問題研究所ホームページ (http://www.ipss.go.jp/

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