シニア世代を迎える前に、考えておくべきこととは?|現代社会のミドルシニア
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- 公開日:2021年11月26日
働き方改革、平均寿命の変化……と、この10年で日本を取り巻く雇用制度は大きく変わりました。その中で、定年の引上げや継続雇用延長はまさにその一つだと言えるでしょう。本日はシニア世代になる前に考えなくてはいけないであろう働き方のポイントをまとめて参りたいと思います。
溜息が多いシニア世代にならないために・・・
先日、愛知県の実家に帰省した時のお話です。
新型コロナウイルス感染症も徐々に落ち着いてきたので、祖母の家にも足を延ばそうと妹と遊びに行きました。
祖母と久しぶりの再会を喜んでいると、ピンポーンとチャイムの音が。
「誰かね...」と見に行った祖母が戻ると、ご友人の女性が一緒に入ってきました。
最近、祖母がご近所で仲良くしているというマダム(以下、この呼び方で失礼します)は、身なりもきちんとされた美しい方でした。
私たち姉妹は初対面のこのマダムに気を遣ってそろそろ帰ろうかと話していたのですが、結局皆でお寿司を取って食べることになりました。
マダムは祖母よりも少しお若い方だということがわかりました。
食事の仕方も上品なマダムは本当に素敵な方で、気さくに話しかけてくれ、普段は人見知りな私も楽しく時間を過ごすことが出来ました。
食後、みんなでお茶を飲んでいたときです。マダムと祖母が二人で話に夢中になり、私たちもスマホをいじったり、姉妹で話したりしていました。
あるときから急にマダムが溜息をつき始め、聞いてはいけないと思いつつ、同じ部屋にいる私たちの耳にもマダムの話が入ってきてしまいました。
私はそれを聞きながら「え......そうなんだ......」と衝撃を受けました。
マダムの旦那さんは数年前に、定年を迎えられたいうのです。それからというものの働いていた会社の再雇用を希望してみたものの、採用されず......、他の求人を当たるにもなかなか雇用されないのだとか。
祖母は話を聞きながら「大変ねぇ......」と相槌を打っていましたが、あまりにもマダムが悩んでいる様子だったので、冷蔵庫からケーキを取り出し「これでも食べてちょうだい」と励ましているようでした。
マダムの旦那様はお金に困っているわけではなく、何か社会に接して残りの人生を生きていきたいとの希望を持っているといいます。
なかなか思うように採用されない元気のない夫を見て、マダムも悩んでしまうのだそうです。
帰りの電車の中で、妹は「あんなに綺麗な人なのに溜息ばかりでかわいそうだったね」と言いました。私もその通りだと感じました。
素敵な身なりのご婦人に溜息は似合わないと思ったからです。
働きたくても働けない⁉
2013年4月に「高年齢者雇用安定法」が改正され、希望者は原則65歳まで継続して働けるようになりました。
高年齢者雇用安定法による65歳定年制は、2025年4月からすべての企業の義務になるといいます。
また、それと並行して厚生年金の支給開始年齢は、2013年から3年ごとに1歳ずつ引き上げられており、2025年に65歳となります。
支給と退職を同じタイミングにすることで、政府は、退職と厚生年金受給の間の収入のない期間をなくそうと考えているのです。
さきほどのマダムの旦那様は、5年ほど前に退職をされたといいます。まさにこのシニア層の働き方が大きく変わる移行期間でした。
現在、日本ではシニア層に働いてもらうための雇用を創出しています。
しかし、65歳を超えても働きたい人は7割にも上るといいますが、希望者全員が65歳を超えて働けるしくみのある企業はわずか2割と、その差は大きく開いているといいます。
そこで政府は、65歳以上の高齢者に対する再就職支援を重点的に行う「生涯現役支援窓口」の増設や、「高年齢退職予定者キャリア人材バンク」事業の実施などシニア層の雇用を広げようと積極的な取り組みを始めているのだそうです。
※データ元:厚生労働省 令和元年「高年齢者の雇用状況」
働けるうちは働きたいと思っているシニアが急増!
現在、シニア層の就業意識は、65歳くらいまで働きたい人は13.5%、70歳くらいまで働きたい人は21.9%に対し、働けるうちはいつまでもという人が42%と、定年後も働き続けたい意欲を持っているシニア層が大多数だということが窺えます。
そんなシニア世代が働いていく上で、知っておいた方がいい制度があります。
知らないと損をすることもあるので、働き始める場合には気を付けた方がいいのです。
・社会保険
原則として、75歳以上は後期高齢者医療制度の対象となり、移行手続きが必要になります。
75歳未満でも「後期高齢者医療広域連合」の認定を受けた人は、後期高齢者医療制度の対象に。
・雇用保険
失業保険では、平成29年から65歳以上でも適用対象となりました。65歳以上でも転職する可能性があるからです。
・在職老齢年金
年金給付対象者であっても、仕事をして厚生年金保険に加入している場合、年齢と合計収入額によっては年金が減額、もしくは停止される制度です。
これを知らないとせっかく働いても、年金を全額もらうより収入が減った、ということになってしまいます。年金と給料のバランスよく見て、損しないように働くことが必要になってきます。
※データ元:内閣府 「平成29年版高齢社会白書」
まとめ
シニア世代でも長く働けるようになってきた現代。
働きたいと思っても働けないシニア層も出てきています。
そんなとき、資格や強みがある方が再雇用される率が高いといいます。
それを踏まえ、現役時代からシニア世代になったことを想定しておくのも大切です。
私自身、溜息より笑顔の多いシニア世代を目指したいと思った今回の帰省でした。
この記事の著者:委甫(いほ)