葬儀業界に転職するということ。ミドルシニア層が活躍しているって本当ですか?

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葬祭などを扱うセレモニー業界は「人間的な落ち着きや経験が評価されるので、中高年層の採用が活発」とのことですが、実際のところはどうなのでしょうか?ミドルシニアの採用について、日本最大の葬祭専門業者の団体である「全日本葬祭業協同組合連合会(略:全葬連)」にて専務理事を務める松本勇輝様にお話を伺いました。

葬儀の数は増加の一途。多様化する社会のニーズに対応するのも大きな課題。

--- 全葬連とはどのような組織なのでしょうか

人である限り、必ず終わりを迎えるもの。そのため、葬祭業という職業は社会的に必要不可欠な存在です。

しかしながら、葬祭業というものは許認可・届出制ではないため、サービスレベルもそれぞれの会社によって異なるという課題があります。そのため、業界の地位向上、経営の安定などを目的として創立したのが全葬連です。

令和元年8月現在、会員 全国57事業協同組合、所属員(各葬儀会社) 1,340名という、名実ともに日本最大の葬祭事業者の組織となっています。

---活動について教えてください

葬祭専門事業者団体として、共同購買事業や葬祭事業の近代化など、業界の健全な発展に対しての活動を行っています。各自治体と協定を結び、東日本大震災等大規模災害における緊急支援活動なども展開しています。

所属員の7割は地域密着型の中小企業も多いため、消費者生活センターなどで取り上げられるトラブル事例の共有や、人材育成に関する情報の提供なども幅広く行っています。

---葬儀業界の状況について教えてください

2018年度では約136万人の方がお亡くなりになりました。今後、2040年には約170万人の死亡者が予測されており、葬儀自体の総数は増加傾向。業界の市場規模としては約1兆5千億円ほどと言われています。

近年は、高齢化の進行やIT化に伴う生活様式の変化により、葬儀に対する要望も多様化しています。「終活」という言葉が一般化してきているように、生前からご相談に来られる事前相談も年々増加しています。

そうした社会の要望に対し、いかにして向き合っていくかが葬儀業界に身を置く人材の課題と言えるでしょう。

葬祭ディレクターと葬祭スタッフだけが葬儀業界の仕事ではない

--- 葬儀業界にはどのような職種があるのでしょうか

代表的なものは「葬祭ディレクター」「葬祭スタッフ」です。

葬祭ディレクターは、いわばお葬式のスペシャリスト。ご遺族との打ち合わせから式のプランニングまで、葬式の総責任者の役割を担います。

より現場業務を詳細に担当するのが葬祭スタッフ。遺族の着付けの手伝いから、参列者への案内など、式を円滑に進行させる役割を担います。

この2つの職種は厳密に分かれていない事業所も多く、小規模の事業所であれば葬祭ディレクターが兼任する場合もあります。

--- その他にも職種は存在するのでしょうか

葬儀会社といえど、一般の企業と同じです。現場仕事以外で、総務や経理、人事などの職種も必要とされます。また近頃では生前から会員を募集している葬儀社も多く、そういった会社では営業などの職種も求められています。

雇用形態についても、葬祭ディレクターは正社員が多め、葬祭スタッフはパートが多めという傾向はありますが、個々の企業によって異なります。あくまで目安として考えるのがよいでしょう。

新たなビジネス経験と人間的な落ち着きを併せ持つのが、ミドルシニア層の強み

--- 葬儀業界が抱える人材領域での課題を教えてください

他の業界と同様に人手不足は、葬儀業界においても大きな課題となっています。

葬儀数が増加していることによる業務の増加に対応する「量」の問題。そして、残されたご遺族がこれからどう生きていくかに思いを寄せながら、最良の葬儀を提案できる人材の「質」の問題。それぞれが課題と言えるでしょう。

そういった課題を解決する存在として、ミドルシニア層は期待を集めています。

--- なぜミドルシニア層に注目が集まるのでしょう

そもそも葬儀業界は、比較的ミドルシニア層の採用が浸透している業界のため、中高年を採用することに対して抵抗感が低いという背景があります。

加えて「仕事経験」、そして「人生経験」のそれぞれが活かせる仕事であるということでしょう。

業界未経験であることがハンデにならないことも大きな理由かもしれません。

--- 未経験の方でも問題ないのでしょうか

全く違う業界から入ってくる方も多い業界ですので、業界経験が問われることはありません。同業界といえど、会社が異なればやり方が大きく変わることから、同業からは採用しないという会社も存在するくらいです。

前職経験も多様ですね。葬祭スタッフだと、デパートやホテルなどで接客を行っていた方が多い傾向はありますが、専業主婦だった方もいます。

転職してくる年齢も多様です。55歳、人によっては60歳を超えてからこの業界へ入る方も存在します。大手企業から家族経営の葬儀社に転職した方は、これまでのビジネスの視点を十分に活かし「家業から企業へ」と会社を成長に導いたケースなどもあります。

--- ミドルシニア層を雇用することでメリットやデメリットはありますか

経験部分の他でメリットを挙げるならば、人間的な落ち着きでしょうか。私達が接するお客様は大切な方をなくされたばかりのご遺族。悲嘆に暮れ、精神的に不安定な場合が多くあります。

そうした遺族の感情に寄り添うことができるのは、豊富な人生経験を持つ年配者。自身の葬祭経験なども顧客目線で語れることから、不安や疑問の解消につながり、顧客に対して自然に安心感を与えることができます。

デメリットは特別思い浮かびませんね。健康面・体力面のフォローをしていれば、大きな問題は無いように思います。

社会から必要とされる業界を、自身の経験で変化させていく面白みを感じてほしい

--- 働き方改革が叫ばれていますが、葬儀業界でも何か変化はあるでしょうか

人の死は予測できないため、年中無休での対応が避けられないというのが業界の特徴でしたが、シフト制を設けるなどの工夫で長時間労働を抑制する取り組みが行われています。

夜間電話対応は専門のシニアスタッフが担当する、夜勤と日勤を切り分けて長時間労働にならないように配慮する。様々な施策を試すことで働きやすい環境を作る努力を各社が進めているところです。

そういった観点からも、他業界からきた人材が前職でのやり方を持ち込み、仕事の効率化を図るといった効果も期待されています。

--- 葬儀業界にはどんなやりがいが感じられるのでしょうか

地域に根ざした葬儀社などは、多くの地元の方から頼られるため地域インフラとしての役割を果たしている場合もあります。そうした会社では「○○さんでお願いします」など属人的に頼られるケースも多いので、人から頼られることに誇りとやりがいを感じる方が多いです。

また、報酬に関しては「葬祭ディレクター技能審査」の資格を取ることで手当が支給されたりするケースもあるようです。報酬は必ずしも企業規模に比例はしません。実力のある方ならば小さな事業所でも多くの収入を得ている話も聞きます。

---活躍できるのはどんなマインドを持った人でしょうか

働く側にとって葬儀は年に何度と行う仕事ですが、ご遺族にとっては大きな人生のイベント。その温度感の違いに想像を巡らせ、人間味を備えたプロフェッショナルとしての振る舞いができる人こそ最良のサービスを提供できるでしょう。

まとめ:葬儀業界への転職を検討している方にメッセージ

葬儀という習慣はどの人種・民族にも存在するもの。時代が変わろうとも人間の根源的な営みである以上、なくなることはありません。

日本の葬儀会社は固定化された風習を持つ企業が多いことも事実。そのような企業にこれまで自身が育んできた経験を織り交ぜ、新たな文化、新たなビジネスを生み出していくことも可能。業務内容を工夫し、年配者が長く働ける制度の導入も進んでいる状況です。

これまでの経験を活かし、地域から感謝され、長く働くことのできる葬儀業界での仕事。興味を持った方はぜひ門戸を叩いていただきたいですね。

お話:全日本葬祭業協同組合連合会 専務理事 松本勇輝様

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