60代女性 秘書の転職体験談|生涯現役の秘書でいるために。諦めずに活動することの大切さ

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60代女性 秘書の転職体験談|生涯現役の秘書でいるために。諦めずに活動することの大切さ

30歳で地元北海道から単身上京して以来、長く「秘書」として働き続けてきた植田さん63歳(仮名)。今でこそご自身のアイデンティティとなっている秘書の仕事ですが、始めた当初は特別な思い入れはなかったそう。これまでのキャリアと年齢を経てからの仕事の探し方についてお話を伺いました。

この記事の目次

    もっと大きな世界に触れてみたい。その思いから30歳で単身上京

    北海道の地方都市で生まれた私。振り返ってみると、「これがやりたい」という強いこだわりはあまり持っていなかったかもしれません。

    教員だった両親の勧めもあって短大へ進んだときも、新卒で入社した楽器メーカーへの就職も、どことなく流れに身を任せたところがあったように記憶しています。

    入社した楽器メーカーでは札幌で勤務。ショールームの受付や一般事務的な業務、さらに、音楽教室やコンサートの実施に関わる仕事をしていました。もとよりピアノや音楽が好きだったため選んだ仕事。仕事自体は興味あるものでした。

    当時から思っていたのは「結婚して家庭に入るより、働き続けていたい」ということ。それを実現するためには「仕事も、自分もステップアップが必要」という意識ががありました。

    そうして、30歳になった頃。周りの友人たちが転勤や結婚で次々と東京へ旅立っていきました。そのとき湧いたのは「東京に行けば、大きな仕事がある。そこでステップアップしたい」という気持ち。

    そうして10年ほど勤めた楽器メーカーの退職を決めると、次の仕事を決めることもなく、単身東京へと旅立ったのです。

    派遣会社に登録し、大手の会社で勤務することに

    上京した当時は、労働者派遣法が施行されて間もない頃。直接雇用ではないことに不安はありましたが、派遣会社に登録してみることに。

    すると札幌にはない大手企業の求人がたくさんあるうえに、時給はアルバイトよりも高め。そこで見つけた大手企業の研究所での仕事に就くことに決めました。

    ここでは研究所所長の秘書として勤務し、スケジュール調整や来客対応、接客などの業務をしていました。加えて、所長が研究者であるため、研究会での資料作りなども依頼されました。

    当時、パソコンは一般的ではなく、もちろんパワーポイントなどない時代。初めて触るパソコンを覚えるためにスクールに通って学びながら、資料作りを行っていました。

    「なんで秘書なのにこんなことまで‥」という思いもありましたが、結果としてパソコンには強くなり、結果として自分のスキルアップに。何事も夢中になって取り組めば、自分の力になることを実感しましたね。

    「派遣は35歳まで」という風潮から、次の仕事を意識

    仕事の面白みを感じてはいましたが、当時の世の中では「派遣は35歳まで」という風潮もあり、今後の働き方について考えるように。

    パソコンスキルもついたのでパソコンのインストラクターという道も考えましたが、学校に通わずに独学で習得する時代が来るだろう、と思い断念。

    そうして導き出したのは「秘書としてのスキルが高ければ市場価値も高まり、いつまでも働いていける」という考えでした。しかし、今の仕事はどちらかといえば「秘書的な業務を含む庶務」のような仕事内容。

    幅広のスキルは身につきますが、なかなか専門性がつきにくい環境。ならば秘書業務に専念できる「役員秘書」の仕事に就こう。そう考えたのが、36歳の頃でした。

    秘書の仕事の深みを追求していく面白さ

    DSC_0010.png

    求人情報誌で見つけた派遣会社の求人で、役員秘書の仕事を発見。応募したところ、「すぐに来てほしい」と採用が決まりました。

    それは大手企業の役員秘書。4人ほどの役員を担当し、スケジュール調整や来客対応などこれまでやっていた業務の他に、会食のレストラン予約、配車手配など役員秘書ならではの仕事も行うようになりました。

    企業の機密に関わりながら、経営層と信頼関係を築きながら業務を進めていくことは刺激的。かつ自分の引き出しが増えていく実感がありましたね。

    しかし、4人の役員を担当していると、お互いに遠慮しあってしまい、あまり仕事を依頼されないことも。そんな経験をしているうちに「経営トップの個人秘書をやってみたい」という思いが芽生えるようになりました。

    そんなときに、別で登録していた派遣会社から社長秘書の求人を紹介されたため、その仕事を受けることに決めました。40歳になった頃のことです。

    深く、幅広い経験を積めた社長秘書の仕事。

    入社したのは、専門商社の経営トップの秘書。ここでは本当に様々なことを学ばせていただきました。

    例えば会食の手配。先方のワインの好みを事前に把握し、その銘柄を持っている店の確保。さらに、そのワインに合うチーズの手配まで行うことも。

    他にも、お召し物のほころびを見つけたら繕い物をする。ランチでシャツが汚れたら、早急に替えのシャツを手配する。自分にできることは率先して何でも行っていました。

    インターネットが世に出始めた頃ということもあり、興味を持った社長の指示で会社のHPを作成したことも。このときはパソコンのスキルが活かせました(笑)。

    社長秘書を行ううえでの基本的な考え方は「ビジネスを推進する社長を、常にベストコンディションに保つこと」とでも言うのでしょうか。常に気配りを忘れないこと。社長の思考を考えて先回りすること。そう習慣づけながら働いた経験は大きな財産となりました。

    この商社の社長秘書を2年間経験した後、大手企業の子会社の社長秘書に。都合10年間をこの会社で過ごしました。その間、社長は4名交代。私だけが把握していることなども多かったため、大変重宝されていました。

    「このままずっとこの会社で過ごしてもよいかな」と思っていた矢先。大事件が起きました。東日本大震災です。55歳のときのことでした。

    年齢の壁を実感した50代での仕事探し。

    震災の影響で在籍していた会社の業績が急落。その影響もあり、社内コストの見直しが図られ、社長付きの運転手や社長秘書などの契約が打ち切られ、次の仕事を探すこととなりました。

    仕事を探しはじめて感じたことは、これまでと違って求人の選べる幅が急激に少なくなっていたこと。前職に就いたときは40代だったこともあり、派遣社員でもそれなりに仕事を選ぶ幅がありましたが、派遣会社によっては登録も断られる次第。いわゆる「年齢の壁」を実感しましたね。

    それから独立行政法人でアドバイザーとして1年半ほど働いた後、大学教授の秘書として4年ほど働くも、予算縮小のため時短勤務の打診が。それでは生活が成り立たないため退職。

    その後は、1ヶ月、3ヶ月といった単発の仕事を受けながら、ときには掛け持ちで仕事を持ったりしていました。

    単発で仕事を受けていた理由は、気に入った秘書の仕事が出たら、すぐに応募できる状況でいたいため。

    「この年ではもう無理か」
    「でもやっぱり秘書の仕事がしたい」

    その一心で、働きながら求人情報の収集を続けていました。そんな生活が一年ほど続いたある日、ようやく希望の秘書の仕事と出会えたのです。

    それは中堅の機械メーカー。高齢の会長のため「若い人よりもベテランがいい」というオーダーを出していることを聞いて、すぐさま応募。無事採用が決まりました。

    高齢から希望の仕事に就くためには、柔軟な気持ちが必要

    DSC_0013.png

    正直言って、この年令での仕事探しは楽ではなかったですね。希望の仕事が見つかるまで1年近くかかりましたし。

    ですが、単発の仕事を続けて働くのも悪くないかな、と感じました。仕事で出会った同年代の方で「春は○○商事で、夏は□□のメーカーで...」という短期仕事のローテーションを組んで毎年働かれている方もいました。

    仕事先で信頼を得て「また来てほしい」と思ってもらえるようになれば、こういう働き方もできるんだなぁ、という新しい発見もありました。

    この年令になると、派遣会社の求人を見て「登録したい」と申し込んでも、ほとんどの場合で登録まで至りません。このことに対して最初のうちは落ち込んだり、イライラしたりすることもありましたが、そんな気持ちになっても仕方ないんですよね。

    就きたい仕事を手にするには、求人情報をチェックして、とにかく数を追うしかありません。へこたれてる暇なんて無いですしね。仕事の探し方も、これまでなら断っていたような待遇の求人も検討するなど、柔軟に活動するようにしました。

    大切なことは「年を取ってる自分なんてどうせ...」などのネガティブな気持ちを持たないこと。年齢に対する評価は人それぞれ。今回の私のように、ベテランがいいという人もいるんですから。

    入社に至るまでは年齢はネックになりますが、入社してしまえば年齢は関係ありません。あるのは、「期待にどれだけ応えられるか」ということだけ。パフォーマンスを発揮すれば、契約の延長だってついてきます。

    はじめは「秘書」という仕事に対してこだわりのなかった私ですが、今では「生涯、現役の秘書」として活躍したい。そんな生き様を夢見ています。
    ※年齢は2019年4月取材当時のものです

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