パートが雇用保険に加入するメリットとは?【社労士監修】

  • ちょっと得する知識
パートが雇用保険に加入するメリットとは?【社労士監修】

パートの場合、雇用保険に入らなくていいんだよね?――実はこの考え、間違いなのです。パートであっても、労働時間などの条件を満たせば、雇用保険に加入する義務が発生します。「雇用保険に入るのなら、掛け金が引かれるんでしょ?だったら働く時間を制限したほうがいいのかな?」などの疑問が湧く方もいるのでは。そんな方のため、パートが雇用保険に加入するメリット・デメリットについてご紹介します。

この記事の目次

    パートでも雇用保険に入れるの?

    pixta_38406838_M.png

    雇用保険は、条件を満たした人は必ず加入する「強制適用保険制度」

    「雇用保険」は国の社会保険制度の一つで、「労働者の生活及び雇用の安定と就職の促進」を目的に、さまざまな保障を受けることができます。最もよく知られているのは失業時に給付される「基本手当」で、「失業保険」という通称で呼ばれています。

    パートが雇用保険に加入する条件は、以下の3つあります。

    ・1週間あたり20時間以上働いている
    ・勤務開始から31日以上働く見込みがある
    ・学生ではない ※ただし、休学中などの例外あり

    雇用保険は「強制適用保険制度」なので、これらの条件を満たした人は、雇用保険に入ることが義務づけられています。加えて、2017年1月1月施行の法改正により、65歳以上の労働者も条件を満たした場合、雇用保険の適用対象となります。

    パートが雇用保険に入るメリットは?

    失業保険などのほか、高年齢雇用継続給付金が支給される

    雇用保険に加入すると、毎月の給料から雇用保険料が天引きされてしまうため、1週間あたりの勤務時間を抑えて、雇用保険に加入しない選択をするパートの方もいます。しかし、天引きされる金額はさほど大きくはないため、雇用保険に入ることで得られる保障を考えて、雇用保険に入る選択もする方も少なくありません。

    加入の一番のメリットは、前述の「失業保険」が受けられること。申請後、以下の条件を満たして失業保険の認定を受ければ、再就職までの一定期間、失業保険を受給することができます。

    ・離職後、ハローワークに来所して求職申し込みを行い、働く意思と能力があるが、「失業状態」である
    ・離職前の2年間で、1か月あたり11日以上働いた月が通算12か月以上ある

    失業保険の給付額は、過去6か月間の給与や年齢、勤続年数などから算出されます。なお、給付時期や日数は、退職理由が自己都合であるか会社都合であるかによって異なります。

    このほか、失業保険を受給している人が再就職をした時に支給される「就職促進給付」や、厚生労働大臣が指定する教育訓練を受講・終了した時に支給される「教育訓練給付金」もあります。さらに、育児休業や介護休業で仕事を休んだ際に、「雇用継続給付」を受け取ることもできます。

    就職促進給付について

    教育訓練給付制度

    そしてもう一つ。60歳以上65歳未満の加入者を対象とした「高年齢雇用継続給付金」もあります。賃金が60歳到達時と比較して75%未満となった場合、手取額の低下を抑えることを目的に給付金が支給されます。

    高年齢雇用継続給付金についてのQ&A

    パートが雇用保険に入るデメリットは?

    給与の0.3%が、雇用保険料として天引きされる

    冒頭で説明した通り、雇用保険は国の社会保険制度です。失業や育児、介護等で働けなくなった時などに保障を受けるものであり、加入により不利益が生じるようなことは一切ありません。

    ただし、社会保険料を支払うことになるため、金銭的負担をデメリットと感じる方も中にはいらっしゃるかもしれません。

    2018年度の雇用保険料率は0.9%(一般の事業の場合)。そのうち、0.6%を事業主が負担し、労働者負担額は0.3%となります。月の給与が10万円の場合、雇用保険料として給与から差し引かれるのは、10万円×0.3%=300円となります。

    どうすれば、雇用保険に加入することができるの?

    pixta_35350183_M.png

    希望勤務時間と想定年収に応じて、加入を検討しよう

    パートで働いている方の多くが、家族構成や生活の状況などに応じて勤務時間を調整し、希望の年収を得ていることと思います。「子どもが小さいので、今は週に15~16時間程度働ければいいかな」と判断し、扶養の範囲内におさめるケースもあります。

    しかし、これまでご紹介したとおり、雇用保険には多くの加入メリットがあります。子育てなどで忙しい人も、労働時間の調整などは必要ですが、「とにかく雇用保険には入らない!」と考えるのではなく、雇用保険加入も検討してみましょう。時給との兼ね合いにもよりますが、扶養範囲内で雇用保険に加入するという選択肢も生まれるはずです。

    パートで働く際、所定労働時間を必ずチェックする

    現在、パートの仕事を探していて、雇用保険加入を考えているのなら、「所定労働時間」を必ずチェックすることをおすすめします。所定労働時間とは契約上の労働時間のことで、1週間の所定労働時間が20時間以上であることが、雇用保険の加入条件として定められているからです。週の所定労働時間が20時間を下回っている場合、雇用保険の加入はできないので注意してください。

    加入手続きは、会社が行ってくれる

    では、雇用保険に入るには、どのような手続きが必要なのでしょうか。

    雇用主である会社が手続きを行ってくれるので、労働者であるあなたが手続きをする必要はありません。雇用保険法によって、従業員を一人でも雇っている会社は「雇用保険適用事業所」になることが定められています。パートとして働き始める場合も、雇用保険の加入条件を満たしていれば、企業は雇用保険の加入手続きを行わなければならないのです。

    雇用保険の加入でよくある疑問

    pixta_16675269_M.png

    もしも、会社が雇用保険に加入してくれなかったら?

    もしも、加入条件を満たしているのに、会社が雇用保険の加入手続きをしてくれない場合は、うっかり忘れている可能性も考えられます。まずは、企業の人事担当者などに問い合わせてみましょう。それでも加入手続きをしてくれない場合は、意図的に雇用保険に加入していない可能性があります。会社に相談しづらいと感じた場合は、最寄りのハローワークに相談してみましょう。

    過去に、雇用保険に加入していた場合は?

    過去に別の企業に勤務し、雇用保険に加入していた場合、加入期間を合算することができます。たとえば、パートで働く前に、A社に1年、B社に3年勤務していたとします。この場合、4年間を合算した期間が加入期間となります。

    ただし、失業保険の手続きをしたことがある場合は、それ以前の加入期間を合算することができません。また、前職からブランクが1年以上ある場合も、合算はできません。

    月額わずか数百円。安心感が得られるのが加入のメリット!

    pixta_41329516_M.png

    一定の条件を満たしていれば加入できる雇用保険は、パートなどの短時間労働者はもちろん、正社員や契約社員など、あらゆる従業員にとってメリットの大きな制度です。

    特にミドルシニア世代の方にとって、「高年齢雇用継続給付金」は非常にありがたいもの。しかも、月額わずか数百円の負担で済みます。万が一の状態に保障が得られるという「安心感」も雇用保険加入の大きなメリットと言えるでしょう。

    記事に関する問合せは、ご意見・お問い合わせよりお寄せください。
    ※個別の相談はお受けできかねます。予めご了承ください。

    マイナビミドルシニアに会員登録(無料) マイナビミドルシニアに会員登録(無料)

    関連記事

    主婦におすすめのパートとは? パートに遅刻だ...。そんな時の大人の正しい対応方法は? 転勤族でもパートしたい!おすすめは? 幼稚園ママ必見、おすすめのパートとは?

    記事をシェアする

    • Twitter
    • Facebook
    • Line

    関連する求人

    しゅふのお仕事

    あなたへのオススメ記事

    老後不安に陥らないためにも、シニア世代は再就職をすべき!?

    老後不安に陥らないためにも、シニア世代は再就職をすべき!?

    老後資金に必要とされるお金は2,000万円、3,000万円…と様々な数字が並び、あらゆる見識者によって囁かれています。人生100年時代は、いかに長く健康で働き続けられるかがポイントになるでしょう。本日は、シニア世代の再就職について触れていきます。

    • ちょっと得する知識
    • 2024年3月25日
    パートの時給アップは可能?交渉術と注意点を紹介

    パートの時給アップは可能?交渉術と注意点を紹介

    社会の流れでは年明けの時期から春闘が始まり、正社員の労働条件に関する労働運動が行われます。それに伴い、非正規雇用の時給が上がる可能性もあるでしょう。今回はパート先の時給アップを望む人に向けて、ポイントや交渉のコツなどをご紹介。また、パートの時給に関する法律や最低賃金についても解説します。

    • ちょっと得する知識
    • 2024年3月15日
    【2024年施行予定】フリーランス保護新法とは?概要やポイント下請法との違い

    【2024年施行予定】フリーランス保護新法とは?概要やポイント下請法との違い

    フリーランス保護新法は2023年に成立し、2024年中に施行がされます。年々、ミドルシニアやシニア層でもフリーランスとして働く人は多く、今回の法案が関係する人も多いでしょう。なぜフリーランス保護新法が整備されたのか、下請法との違いなどを解説します。

    • ちょっと得する知識
    • 2024年2月16日
    主婦年金廃止で年15万円の負担増?!検討の背景や家計への影響

    主婦年金廃止で年15万円の負担増?!検討の背景や家計への影響

    2023年10月1日に放送された番組にて、武見厚生労働大臣が「主婦(主夫)年金の見直しの必要性」に触れたため、主婦年金が廃止になるのではないかと話題になっています。今回は改めて主婦年金とはどのようなものか?なぜ廃止が検討されているのか?廃止による影響についてもご紹介します。早ければ2025年にも廃止が決まる可能性があるため、今から影響について把握しましょう。

    • ちょっと得する知識
    • 2024年2月 5日
    2024年1月に義務化された電子帳簿保存法とは?どんな対応が必要?

    2024年1月に義務化された電子帳簿保存法とは?どんな対応が必要?

    2024年1月、電子帳簿保存法の電子取引における「電子取引のデータ保存」が義務化されました。そこで今一度、電子帳簿保存法の概要や2024年からの変更点などを理解しておくことが大切です。今回は、電子帳簿保存法の基本情報や改正内容、対応方法などを紹介します。

    • ちょっと得する知識
    • 2024年2月 2日
    ライドシェアとは?日本での導入・解禁の動向についてご紹介

    ライドシェアとは?日本での導入・解禁の動向についてご紹介

    最近メディアで話題の「ライドシェア」。しかし、ライドシェアとはどのようなものか、カーシェアとの違いがわからない、という方もいるでしょう。日本でもライドシェアが導入されるのか、今後の動向について解説します。

    • ちょっと得する知識
    • 2024年1月26日

    おすすめ・シリーズ記事

    人気記事ランキング

    おすすめの求人はこちら

    活躍中の年代から探す
    雇用形態から探す
    募集条件から探す
    働き方から探す
    福利厚生から探す
    職種から探す
    マイナビミドルシニアに会員登録(無料) マイナビミドルシニアに会員登録(無料)